朝採れのおいしさを届けるために、その日の早朝5時に収穫されたトウモロコシ「きみひめ」を横浜北仲マルシェに届けてくれる旬果市場の小林さん。トラックがマルシェに到着すると、値札をつける前から売れていってしまうほどの人気ぶりですが、あえて年間を通じて出荷しない理由があるようです。そこには甘さの秘密が隠されていました。
朝採れ野菜!という看板だけでなんとなくおいしそうに感じていたんですが、そもそもなんで朝採れっておいしいんですか?
野菜は夜に栄養や水分を溜め込むので、朝が一番ハリがある状態なんです。
収穫後もトウモロコシは呼吸を続けているのですが、その呼吸にも糖分を使ってしまう。
だから一番甘いタイミングで収穫をして、出来るだけ早く食べてもらうために、その日の朝採れトウモロコシを横浜北仲マルシェに届けるようにしています。
全部で6haほどの小林さんの畑。
トウモロコシ以外にも、桃、野沢菜、さつまいも、かぼちゃなど9種類ほどの作物を年間で育てている。
収穫した瞬間から甘さが失われていくんですね。
ということは、卸売市場などを経てスーパーに並ぶトウモロコシは・・・。
だいぶ糖分が抜けてしまっていると思いますよ。
うちのトウモロコシを食べてから市販のものを食べると、「味がしない」って感じる人もいるみたいですね。
トウモロコシと言えば北海道という印象もあったのですが、生で売られているものなら関東近郊の産地の野菜を選んだ方が鮮度がいいからおいしいのか。
言われてみれば当たり前ですね。
しかもこの「きみひめ」という甘さの強い品種は山梨の中でも育てているエリアが狭いので、県外に出回る数も少ないんです。
見つけたらぜひ一度は試してみてほしいです。
そんなに貴重な「きみひめ」を、収穫5時間後には横浜に届けてくださるんですね。
夕方に収穫をしたものを翌朝に運ぶ方が楽なんですが、やっぱり一番おいしいものを届けたいので。
たまに車が遅れて到着がギリギリになると、早く来ているお客さんが並べる前から買いに来ちゃうんですよ。
今のお話を聞くと、一分一秒を争ってでも手に入れたくなる気持ち、わかります。
一株の「きみひめ」に3本ほどがなり、一番上のもの以外をベビーコーンとして早めに収穫します。
残された1本には栄養がよく届き、大きくて甘みの強い「きみひめ」になるという仕組み。
年2回しか出荷しない理由は、
甘さの秘訣となる土づくりにあった
旬果市場の「きみひめ」を目当てにマルシェに来るお客さんも多いのでは?
カゴたっぷりの「きみひめ」のベビーコーン
年2回しか出店していないからか、春になると「今年は出るの?」ってお客さんから直接連絡が来るんですよね(笑)
待ちわびてるんですね。
「きみひめ」は年間を通じての出荷は難しいんですか?
春の次に、秋の収穫を目指して連作をするというところもあるんですが、うちではせずに、その間は別の作物を植えて畑を休ませています。
その間に一度肥料をまいておき、次の春になったらもう一度肥料を入れて土を混ぜます。
これがうちの「きみひめ」の甘さの秘訣ですね。
甲州ワインビーフという、ワインを搾った後のぶどうを食べさせている牛の堆肥を使っています。
他の農家さんの10倍くらいは使ってるんじゃないかな。
特別なことをしているというよりは、山梨で手に入りやすいものを集めていたらこうなったっていう感じなんですけどね。
そこまでこだわりを持って作っているからこそ、一番おいしい状態で食べてもらいたいですね。
そうですね。マルシェの店頭での試食は、「きみひめ」の粒を削いで小さいカップに入れてお渡ししているんですが、これも削いだ瞬間から鮮度が落ちていってしまうんですよ。
だから都度必要な分量ずつ試食を用意していて、少し大変ですね。
そんなところにも工夫が。
家に帰ったらすぐに茹でたほうがいいんですか?
茹でずに生で食べるのが一番おいしいというのが特徴なので、できればそのままで一度味わってみてほしいですね。
すぐに食べられない場合は、出来るだけすぐに冷蔵庫に入れてあげてください。
仮死状態になり、「きみひめ」の呼吸が止まるので糖分が消費されにくくなります。
温めたい場合は、茹でるよりもラップに包んでレンジでチンがオススメです。
粒一つひとつから伸びているひげ。そのまま食べてOK。
そういう知識は生産者さんから教えてもらわないと、なかなか消費者には届かないですね。
本当はもっと店頭でもお話する時間を取りたいんですけどね。
実はヒゲも食べられるんだよ、って言うと驚かれるので、意外と知られていないものなんだなと思いました。
逆に、食べ方のアレンジはお客さんから教えてもらうことも多いかな。僕たち農家はなかなかアレンジして食べないから。
アレンジいらずでおいしいというのも、忙しい方には嬉しいポイントですよ。
でもみんなすごいよね。
ベビーコーンを輪切りにするとお花みたいになってかわいいから、お弁当に入れているとか教えてもらうと感心しちゃう。
ベビーコーンは、一度にたくさん買っていくお客さんも多いから、魚焼きグリルで丸焼きにする人も多いみたいですよ。
それもおいしそうですね!採れたてを味わった翌日はそうした味わい方も楽しめるんですね。
店頭に置かれたベビーコーンの調理法。
忙しい中でもお客さんにおいしい食べ方を伝えています。
今日の食卓に並べるものを買いに来るような、アットホームな雰囲気がありますよね。
風も気持ちいいし、つい私もクラフトビール屋さんで一杯もらっちゃったりしてね。
奥さんもいろんなお店で買い物して、楽しんでますよ。実は、マルシェで出会った取引先も実は多いんです。
そう。やけに真面目な顔で試食してるなと思ってたら名刺を出して挨拶してくれて、直卸先も増えましたね。
有名シェフからも認められるきみひめ ベビーコーン
旬以外の季節にも「きみひめ」を
楽しんでもらうための商品開発
2ヶ月しか食べれない「レア感」も楽しみの一つですが、やっぱり1年中食べたいです!
私たちも、どうにか残りの10か月に楽しんでいただけないかなと思って、コーンポタージュを作ってみたんですよ。
パッケージのデザインがおしゃれですね。原材料を見ると、トウモロコシと牛乳だけで作っているんですね。
それだけで十分に甘いので、砂糖がいらないんです。トウモロコシと牛乳1:1で作っているので、正直原価率が高くて・・・(笑)
買えますよ。
でもやっぱりマルシェでは新鮮な野菜をお求めの方が多いので、たくさんは持って行かないですね。
大きな「きみひめ」まるごと一本をパウチにしたものも作ってみました。
どちらもネットショップで買えるようにしています。
「きみひめ」の甘さを生かして、ロールケーキのクリームの中に「きみひめ」の粒とペーストを練りこんだ「Shunkaロール」や、大福のあんに仕上げた「きみひめ大福」を、お菓子屋さんに作っていただきました。
商品の詳細はこちら!
今後は、ポタージュをさつまいもとかぼちゃでも作りたくて、今試行錯誤中です。
ラインナップが広がりますね。秋冬の楽しみが増えました。
まず「きみひめ」そのものを味わっていただいて、気に入ったらぜひポタージュも飲んでみてください。